書と言の葉 

映画・テレビの書道作品を書いています。都内で書道教室も開いています

52ヘルツのクジラたち

本屋大賞に選ばれましたね。「52ヘルツのクジラたち」。

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52ヘルツの周波数で鳴くクジラがいるといいます。普通のクジラは10から39ヘルツで声を発しているので、彼らwhalien 52の声は他の鯨には届かない。世界で一番孤独な生き物だと言われています。

 

この小説は、理解されにくい人たちにスポットを当てて進むのだけれど、今、この本が大衆に受け入れられた背景には、

特に私はマイノリティ―ということではないと思うけど、何か抱えている問題があるわけではないけれど、普通の生活を送っている人間だけれど、

それでも私の声をだれか聞いてくれないかな、

そんな現代人に受け入れられたのかもしれませんね。

コロナ渦の世界、みんな家に閉じこもって声を出しても誰にも聞いてもらえない。そんな毎日を送っていくうちにだんだんと声を発することすらしなくなる。

でも、52ヘルツのクジラだって、誰にも聞いてもらえない彼らだって、一生懸命声をあげているんだよ。きっとどこかで私の声を拾ってくれる人がいるかもしれないね。

 

 

「52ヘルツのくじらたち」は、生きにくい人たちの発する声を受け止めることや、それに共感して、一緒に生きていくことなど、52ヘルツの鯨と重ね合わせていくストーリーで、とても儚くて、暖かくて、優しい小説でした。
虐待やマイノリティ、最近このテーマの本が多くて、最初は、内容にあまり期待せず入り、さらに、悪の描写がなかなか激しくて、読んでいて結構シンドかったのですが、それでも結局一気読みしてしまいました。表現のうまさと文体の軽やかさ、設定した背景のよさが大きかったと思います。また、単なるめでたしめでたし、に終わらず、現実も見据えたエンディングになっているところもなかなかよかったですね。

最後、海で52くん(男の子の名前)の声が届いた時の、安堵感と爽快感は、いいです。目の前の海の中に、クジラくじらが潮を吹く情景が目に浮かびました。

 

そもそもこの本を手にした理由は、「whalien 52」という曲が大好きだからなのですが、↓ にその歌詞の一部載せておきます。

寂しい、寂しい、孤独なクジラ
こうして一人で歌ってる
離れ島みたいな僕も
明るく輝ける日がくるのかな
寂しい、寂しい、孤独なクジラ
こうやってもう一回歌ってみて
返事のないこの歌が
「明日」に届くまで